別冊

ぼんのう

〜 第一回 〜

少年への恩返しとして

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なんで思いついちゃったかな?

 

さて、まずはマンスリー企画【月刊ぼんのう】を始めるに至った経緯を書いておこうと思う。

 

繰り返しになるがこの企画のテーマである『自分が書き始めた頃からの曲を何らかの形で聴いてもらう』という考え自体は、もう5年くらい前からあったことなのだ。

かつては、CD連続購入の特典として、そうした昔カセットテープに録音して残しておいた音源をラジオ番組風に語りながら紹介するCDを配布したり、通常のライブなどでも一曲だけ「失恋した時に初めて書いた曲」とかを歌ってみたり、ライブ自体の企画が「全出演者、普段やらないバカな事をやる」というような内容の時に、学ランを着て「高校生の時に書いた曲だけ歌う」ということをやってみたりしたことがある。

つまりは、最後の「学ラン着て」に顕著なように、どこか「これはシャレですよ」とか「ちょっとした息抜きに」あるは「なにかのオマケで」というエクスキューズがあって成立させていたものである。

 

そうじゃないと聴いてくれる方が、普段の自分がコレをやっていると思われるのも困るし、曲のクオリティ的に(例え、今も昔も大して変わってないと思われても、自分の中では大きく違うので)そればっかり聴かせるのも申し訳ないし、なにより自分が歌ってて辛い(笑)。

 

しかしだ。

何度かそういう事をやっているにも関わらず、しばらくするとまた「子供の頃に書いた曲とかも聴いてもらいたいな」という気持ちがよぎったりするのである。

要するに、自分の中で何かケリがついていない感覚があるのかもしれない。そこは、多分「これはシャレですよ」という言い訳をつけてきたからだろうと思ってる。そうじゃないとできなかったけれど、自分に対して本気で歌ってなかったというか…。

 

かと言って、その若い頃の曲をわざわざ通常のライブの中に組み込んで、現在の曲をその分減らしてというのも本意ではない。それはそれで「もったいない」というか「それよりは今の自分がやっている事を聴いてほしい」と思うのも正直なところ。

 

こうした、自分勝手でなおかつ矛盾する考えを持ったまま、何かの折にはふと「あぁ、昔の曲を」と考えかけては、「いや、ちょっと聴かせるのはどうだ?」とか「それ入れちゃうと持ち時間のなかで、この曲歌えなくなるな」とかに阻まれてきたのだ。

それが、昨年『ちょっとした40周年記念』などと言って、多少なりとも今までの事をかみしめるような気分でいた時に、そして予想してなかったような状況になって、「なにか成立させる方法はないかな」という気持ちになっていた。

 

 

ちょっと話は変わるが、この「昔の曲を紹介する」ということに関しては、いくつか僕がよくつかう表現で言えば「おしらせ」が時たま来ていたのだ。

要するに、やり方に関してのヒントになるようなものだったり、やってみようかなという気にさせる事だったりが…。

 

詳しく書くと途轍もない長さになるし、中には「なんでソレがここに繋がるの?」(なにせ感覚的な事なので)というものも多いので、省略するが、その中でひらめいたのが、今回の企画である。

​細かい取り決めを作ってみた

 

要点はこういう事だ

・まだ曲を書き始めた頃の曲も、一つのライブの中にしっかり盛り込まれた形で「本気」で歌ってみる

・できるだけ多くの曲をやってみたいが、初期の頃の曲だけでは聴いている方も歌う方も辛いので、「昔の曲だけやります」という企画は苦しい。

・曲が「若い頃のもの、今のもの」というのは自分自身の線引きでしかないので、「全部自分のやって来たこと」として披露してもいいのではないか?

・それやってみてから、自分がどうなるのか見てみよう。

 

大雑把にいうと、こういう感じの事を考えたのだ。

そして考えを進めて

 

・いっその事、キャリアの全部を網羅してしまえ

・曲が大量にあるし、通常のライブや一本の企画では中途半端になるから、定期的にこの企画でやろう

・年代ごとに順に披露する意味も大してないし、全部自分の曲なんだから、年代ごちゃ混ぜにしたセットリストで毎回、ライブとして構成する。

・これを1年通しての企画としてやってみる。

 

というような事を決めた。

 

当初、「毎回10曲ずつ」と考えたのだが、まぁライブの時間的な事とか数字的なキリの良さからの10曲である。そうすると年間で120曲。

まぁ、量的なところでは楽勝である。なんせ40数年間で700くらいはある。もちろん、どうやっても今歌うにはあまりにも酷すぎる曲もたくさんあるし、弾き語りには絶対的に不向きなというか、そもそもがバンドの演奏があって初めて成り立つような作りの曲もあるので、全部が今弾き語りで歌えますよってわけではないが、平均しても年間で10~20曲は書いているので、この10年間だけでも120曲以上はあるのである。

なので、毎回20曲の計240曲にしてもいいんだが、それだとこういう企画としては長すぎる。

 

しかし、この120という数字に便宜上の意味合い以外の何もないのがつまらない。

ライブの時間的な事を考えて、1回10曲前後として、なにか自分が(あくまでも「自分が」である)面白く感じられる事にはできないか?

というところから出てきたのが、「毎回9曲」である。

ほぼ直感的に出てきたのだけれど、毎回9曲を12回続ければ計108曲。除夜の鐘と同じ、人間の煩悩の数である(笑)。思いついたのが暮れだったからかもしれない。

 

試しに他の数字も当てはめて考えてみたが、やはり直感に勝るものはない。自分でしっくりきたのはやはり「煩悩と同じ曲数を歌う」という事だった。まぁ世にあるポップソングのほとんどが何かしらのことで人間の煩悩に関わる歌である。恋愛だろうと人生の葛藤であろうと…。

​しかし肝心な問題がまだある

 

そういう思いつきを遊ばせているうちに実行する方向に進んでいたのだが、問題は自分が年間を通してこの企画をやり通せるか? というところである。

長いことやっている割には「一年間コレを継続してやります」的な事をやった経験がほとんどないのだ。しかも、ある意味では自分に負荷をかけて、聴かれて恥ずかしいような10代、20代あたりの曲をフィーチャーするのである。

ちょっともしかしたら気持ちが折れるかもしれない。

正直、あまり反応もないようなら続けるのはキツイだろうなとも思う。

 

だが、自分でもよくわからないのだが、今年はコレをやろうと思い立ってしまったのだ。ある意味、「やってみたかった事」を通常のライブではない形なんだけどちゃんとしたライブとしてやるという、おそらく2度とやらない事。

なので、ここで自分的にももう一つ、楽しみを増やしておこうというか、途中で投げ出せないような仕掛けを準備しておこうと。

 

という事で、「レギュラーオープニングアクト」を誰かに務めてもらおうと思いつく。

自分が40数年やってきたものをまとめて披露する企画で、近年になって曲作りに取り組み始めた方、まだあまりライブステージに慣れていない方に出てもらって、数曲ずつやってもらってライブ慣れする場にしてもらおうと。そして、毎回新曲を書いて演奏してもらうというのはどうだろう? と。

これで、ただ自分がやるのが厳しくなったからと言って途中でやめてしまったら、その方に与えた機会をこっちの都合で奪う事になるんでね(笑)。おいそれとはできない。

それに、初めて間もない人が毎月どんな曲を書いてくるのかという楽しみもあるし、回を重ねてライブに変化が出てくるのなら、それはきっと観ていて楽しいだろうなと。

 

そういう事で、そのオープニングアクトをEriちゃんが引き受けてくれる事になった。

バンドがやりたくて楽器と曲作りを始めたってのも、自分と一緒で興味深い。何度か彼女の演奏のPAもしたことあるし、こちらも気兼ねなくやれそうだ。

 

という事で、企画をFOLKIEの松川さんに相談したところ、快くご協力いただける事になり、年間を通しての企画を始める。

 

​再び、なんで思いつちゃったかな?

 

正直、先ほどから書いているように、自分でも恥ずかしい面もあるし、今更歌ってどうなんだ? っていう曲もあるし、なんというか聴いてもらう方に対しても、少年時代の拙い曲だったり、あるいは若い頃のバンドでやってたような今の自分とそぐわない曲や、曲として古臭いものを聴いていただくというのは、一体誰が得するんだろう? とは思うのだ。

自分自身のことで言えば、あまり意識せずにこの企画が実現する方向に考えを進めていったところからすると、おそらく一年間通して企画をやり終えた後に、何かしらのものが見えてくるんではないかと、そういう気がしている。

その前段階として、一旦自分のこれまでをライブという形でまとめておきたいのではなかろうかと。

 

聴いていただける方には、一応「シンガーソングライター」なんてものを名乗っている辻正仁というのが、現在のスタイルになるまでにどういう事を経過してきたのかって部分を楽しんでいただければ幸いです。もちろん、そういうエピソードもライブ中には語っていきたいなと。

 

そして、もう一つ。

これは以前から若い頃の曲を取り上げる機会があった時にも思っていた事なんだけれど、昨年の『ちょっとした40周年記念』ではないが、これまで40年ちょっと曲を作って人前で歌うなんて事をやってこれたのは、もちろん色んな方々のおかげである。

曲やライブを気に入って応援してくれたり、楽しんでくれた方、続けていく事を励ましてくれた方、力を貸してくれた方、アドヴァイスをくれた方、そして音楽を続ける事や作ったものを否定したり批判した方、嘲笑った方(モチベーションを高めてくれてありがとう)。

 

その方々にはとても感謝している。この人たちや経験した出来事がなければ、おそらく続けては来れなかった。

 

そこに加えて、もう一人、感謝したい人がいるのである。

それは、40年ほど前の天気の良い5月か6月の原っぱで、ぼんやりと呑気に「ずーっと自分で歌作って歌っていきたいな~」なんて思いを浮かべてた少年である。

「よくぞ、あの時そんな事を思ってくれた!」

と言ってやりたい。

 

あの時、そう思ってなければ多分、今の自分とは随分と違う人生になってたのだと思う。そしてなんだかんだとありながら、オレは結構今の自分でいれることが嬉しいし、若い頃の自分が書いた曲や経験がなければ、今自分が書いているような曲は書けてないだろうと思うのだ。

だから、若い頃の自分には感謝したい。おそらく誰も評価はしないだろうから、自分で精一杯賞賛する(笑)。

 

今、昔の曲を振り返れば、結構稚拙だったり、曲として成立していなかったり、「まぁ、だれも相手にしないよね」というのがほとんどだ。客観的に見て10代で書いたにしては良くできたなっていうものもあれば、20代でなければ書けなかったような表現があったりもする。

 

そういう全てをひっくるめて、今どんな評価になっていようと、当時は当時なりに、結構真剣に曲を書いていたのだ。そしてそれを「誰かに聴いてもらいたい」と願っていたのです。

 

今まで、時折「シャレです」という言い訳交じりに学ラン着て歌うとかしてたけど、多分それだけじゃ、当時の「切なる願い」には届かないのだろう。

今、おかげさまで多少なりとも、関心を寄せて聴いてくれる方がいる。こういう企画を相談しても協力してくれる方々や場所がある。

その中で、かつて大事な事を思いついてくれた少年への恩返しとして、その歌を真摯に歌ってみようかなと思っている。

 

全部で12回。できるだけ毎回、各年代の曲を網羅していきたいと思っているので、1度だけでもそしてできれば毎回、お付き合いいただけるとありがたいです。