member 制作スタッフ
真柴道ゐ
Rec. Programing. Eg. Mix.
真柴くんと最初に顔を合わせたのは、数年前に僕が企画したライブで彼がPAを担当してくれた時だった。良い音を作ってくれたのはもちろんだが、対応の仕方や関係者への接し方、楽しそうに取り組む姿も含めて、とても気持ちよくやれる環境を作ってくれた。
決して自分の主義や好みを押し付けるのではなく、逆にただ言われるままに要求されたことをこなすだけと言うのでもなく、自分の技術や知識から演者の特性をより良い形で出せるような提案もしてくれたりするところに非常に好感が持てた。なんというか「一緒にライブを作っている」という感覚を共有できるのが僕としては相当にポイントが高かったのだ。
そしてどうやら、彼の方も僕に何某かの興味を持ってもらえたようで、リハの合間や終演後に少し僕のスタイルに関しての感想や質問をもらったり、その日のBGMとして僕が選曲した音楽にも興味を持ってもらえたりもした。
その時に、僕がかつて打ち込みで多重録音していた時の経験や、苦労した事、不満に思った点などを話していたら、彼が「今は随分変わって、その辺の問題はないですよ」と教えてくれ、自分のホームスタジオを作って制作をしているので、何かあれば是非にと言ってくれた。
その初対面の時の感触から、彼はこちらの感覚を受け入れて、なんなら面白がってくれるだろうなという気がして、ずっと気にはしていたのだ。
それで、今年(2024年)になって、何かのライブに行った際に彼がスタッフにいて、なんとなく「あ、とりあえず弾き語りでもいいから、何か試しに録らせてもらおうかな?」と思い、それから半年ぐらいして、ようやく声をかけてみた。
彼は打ち込みの打楽器やピアノの音色をライブラリから探し、さらにイメージに近づくように編集するといった事に献身的に取り組み、僕のアナログな感覚で要求するものを次々とデジタルな方法で実現させていく。こちらが迷っていれば「こういう方法もありますよ」とこちらの意図を踏まえた上での提案をしてくれたり、突発的な発想をすぐに理解して取り込んだり、あまり他の人はやらないようなこちらのアイディアも面白がって対応してくれた。
以前にPAをやってくれた時に思った通り「一緒に作る」という作業ができたのが非常に楽しかったし、ありがたかった。
僕を知る方であれば、自分の曲の編曲を1曲ほぼほぼ彼に預けたと聞けば意外に思うかもしれない。
単に言葉の違いといえばそれまでだが、彼とのレコーディングは「作業の時間」ではなく「クリエイティブの時間」であった。
本間健二
Ba.
本間健二との出会いは2011年。彼がライブバーの店長となり、演者を探して調べ回っている時に、ネットで僕のライブ動画を見て「ウチでライブやりませんか?」と連絡をくれたのが最初である。
きちんと曲を聴いて感想まで添えて出演オファーしてくれる人というのは中々いない。
以来、出演させてもらうのはもちろんのこと、僕の企画に協力してもらったり、彼の企画の立ち上げから関わったり、二人で若い表現者のステージをサポートしたりしてきた。ここ何年かは、年に一回くらいのペースで、僕のサポートメンバーとしてベースで参加してもらったりもしている。
仲が良いとか気が合ったと言ってしまえばそうなのだが、僕にとっては、それ以上になにか”ご縁”というものを強く感じる人物であり、ちょうど干支が一回りする月日の付き合いの中で、そういう「妙なつながり」を実感するような、ささやかな出来事がいくつもあった。
僕が今回の制作に取りかかり始めた頃、彼が北海道を離れることが決まった。
これで会えなくなると言う訳でもないが、これまでのような形で一緒に何かをやる機会はあまりないだろうなと思い、「思い出作り」の一環として(笑)、彼にベースで参加してもらいたいなと思った。
このことで、とりあえず”風の道”をレコーディングしてみようというだけの状態だった企画が、僕の中で「3曲入りのシングル盤にする」という形として明確になった。
カップリングの曲を何にするかに関しては、その頃、あちこちバイクで走り回りながら移住先を探していたり諸々の整理をしている彼の状況から、あまり難しい事を必要としない曲で、1日で3曲分のベースパートを収録できるような曲を、というところから考え始めた。
なんとなく自分のイメージが出来上がり、「そろそろ本間さんに打診しないとな」などと考えながら立ち寄ったスーパーで、移住先を決めて帰ってきていた本間健二が買い物をしているのに遭遇(笑)。
お互い買い物カゴを手に話をして、レコーディングの参加となった。
記念の録音だからと言って特に特別な事は要求しなかったし、彼も込み入った演奏で自己主張するようなタイプではない。最小限の音で必要とされることを満たす、いつもながらのシンプルなベースプレイで、曲の背骨となる音を奏でてくれた。
ちなみに、スーパーで彼と話をした後で、収録曲のデモや歌詞などを送った時に、彼から「ちょっとびっくりした」という返信が届いた。
彼が移住先を探し回って、最終的に「ここにしよう」と決めたのは、そこで見つけたハイキングコースの風景に心惹かれたからだそうで、そこは【風の道】と名付けられている場所であったと…。
僕と本間健二の「妙なつながり」というのは、例えばそういう事だ。
ポトフ
お出迎え. 甘噛み. 遊べ.
真柴くんの愛犬。
人が大好きなのだそうで、スタジオに入って行くといつも飛び上がりながら大歓迎してくれる。どうも彼は、ここにくる人間はみんな自分に会いにきたのだと思っているんじゃないかという気がする。
なんなら、ちょっとトイレに行って戻ってきただけでも大変嬉しそうである。
しかし、御行儀も良くて決して吠えたりしない。何か込み入った作業をしている時には気配でわかるのか、どこかでじっとしていてくれる。そのかわり一段落したなと気がついたら「さぁ、遊んでくれ!」とばかりに目の前に現れて、こちらをじっと見つめてくる。それでもダメなら飛びついてきたり、靴下を脱がそうとする。
プレイバックを聴いている時は、大抵僕のヒザの上には彼が乗っており、フカフカの毛を撫でながら聴いていた。ちょっとした空き時間にはボールの取りあいっこをしたり、軽く戦ったりしていたので、彼に会いに行っていたといってもあながち間違いではない。
彼がいてくれたおかげで、レコーディングの間中ナーバスになることが一度もなかった。
終始リラックスした環境でもの作りができるというのは、大変ありがたい。
もうレコーディングは全て終了しているのだが、彼に会うために、今後もなんらかの用事を作ろうと思っている(笑)。