• 辻正仁

#010 ある日どこかで / Somewhere in Time(1980)


映画にしろ小説にしろ、いわゆる『タイムスリップ物』が好きだったりする。理由はわからないけれど、妙に子供の頃から惹かれるのだ。

そして映画にしろ小説にしろ、いわゆる『タイムスリップ物』はいつの時代にもそれなりに色んな作品が発表されて、それなりに話題になったりもするから、そういうのが好きな人は結構いるのだろう。


それだけに、僕の感想としてどうしようもなくつまらない作品も多数ある。作風も、シリアステイストのものもあれば、サスペンス、そしてコメディタッチやラブストーリーが展開されるものなど、多岐にわたっている。

もうこうなると、一括りに『タイムスリップ物』っていうよりは、色んなジャンルの作品の中で『時間を移動する設定』というのが採用されてると言ってもいいかもしれない。

ちなみに、駄作で一番腹が立つというか、観て損したなと思うのは『シリアスタッチなんだけど、ストーリーが陳腐で単純に時間移動の設定で奇をてらってみたけど、作品の中の時間移動の理論の破綻や矛盾に簡単に気がついてしまうもの』である。

もっと上手に騙してほしい。

それはともかく、一言に『タイムスリップ』と言っても、その方法や理論も作品によって様々である。なんらかの装置を使うものもあれば、超能力的なものとか「体質がそうなってる」みたいのやら、あくまで神秘的なものなど。

最近観た中では”テネット”の時間移動の仕方は秀逸だったなと思う。

小説だと随分前の作品だが”リプレイ”ってのが大好きで何度も読み直していたりする。

こういう仕掛けの物語の中でも特に惹かれるのが、恋愛にしろ因縁にしろ、登場人物の『時空を超えた繋がりで引き合う関係』みたいなものが描かれている作品。なぜか分からないけれど子供の頃からそうなんである。何かきっかけがあったのかもしれないが、記憶にないほど幼い頃からなので、タイムスリップできるならそのきっかけを見つけてみたい気もする。

この”ある日どこかで”もそんな時間移動の方法が独特で、自分好みの心の繋がりが感じられる作品のひとつ。コレをいつどこで初めて観たんだかまったく記憶にないんだけど。

公開時だったのか、それともリバイバルだったのかも定かではない。それこそ「ある日どこかで」と言ってしまいそうな記憶なんだが、面白かったのと同時に、映像の美しさがやたらと印象に残っている。

覚えているのは、この映画を観ようと思って映画館に行った訳ではないという事だ。

いつだったかは忘れてるけれど、コレを観た当時の札幌ではまだシネコンなんてものはなく、東京よりも劇場数が少なかったせいもあるだろうが、大抵1館で2本が交互に上映されていたのである。そして、一回入場料を払ってしまえば、その気になればその日の初回上映から最終上映まで1日中観てることができた。(ちなみに最初の”スターウォーズ”が公開された時は、弁当持参で本当に最初から最後まで繰り返し観た。)

お目当の映画を観に行って、そっちの上映時間に間に合えばいいやって感覚だったので、入場した時には”ある日どこかで”はもう始まって10数分は経過していたと思う。

まだ物語は本格的に動き出していなかったんだけど「え? ナニコレ? 面白い」ってなって、お目当だった作品を見終えてからもそのまま残って、もう一回こっちを最初から観た。

ちなみにお目当の作品がなんだったのかはもう覚えてない。もしかしたら、劇場を出た時にはすでに、そもそも何を観に来たのかっていうのはどうでもよくなってたかもしれない。

まだレンタルビデオも普及しておらず、のちのセルビデオとかDVDとかで映画作品が販売されるより前の時代。そして「1本1回観たら、外に出なきゃダメ」っていうシネコンも存在してなかった頃。こういう「何の予備知識も期待もなく、ついでで観た作品の方が面白かった」なんていう喜びは結構あった。そのおかげで楽しみの幅を広げることができたり、さらに映画の楽しさを知っていけたりしたものだ。

まぁ、最近では定額制でネットで映画見放題なんてのがあるんで、似たような事はできるかもしれないけれど、まったく意図せずに出会えたっていう喜びとはちょっと質が違うような気がするんですよ。観てるの家の中だし。

ともかくこの映画、正直なところ出演者の顔とかまったく覚えてないんだけど、主人公が時代を超えてある女性に強烈に恋をしたってところからのストーリーの展開(終わりはせつないんだが、それも含めて)と、舞台となった20世紀初頭のリゾートホテル周辺の芝生や海がキラキラ輝いている風景なんかは鮮明に記憶に残っている。

よく分からないけれど、いい映画って風景の映像がとても美しいとか、印象的なものが多いのではないかなと思う。

さて、僕はこの映画をもう一度観てみたいなと思っていたのだけれど、実は映画のタイトルを覚えていなかったのです。まぁ、初めて観たのが「ついでに観た同時上映」だったので、監督や俳優の名前も全然分からなかったのね。

それが何年かして、友人の家に遊びに行った時に部屋にあったSF雑誌を眺めてたら、この作品の紹介がありまして。多分、『タイムスリップ映画の傑作特集』みたいな記事だと思うけど。

そこにその美しかった風景の写真が結構大きく載っていて、「あぁ、コレだ!」ってなりましてね。

この配信だとかちょっと検索すれば瞬時に詳細な情報からガセネタまでなんでも必要以上に手にできる便利な世の中に文句をつけるつもりはないのだけれど、そういう予期せぬ出会いから、少しずつ偶然やってくるちょっとした喜びみたいなね、「これは何かの運命ではないのか?(笑)」みたいな気持ちがじんわりと降り積もってくるような幸福感っていうのはなかなか得難くなってきてるかもしれないな。

『ある日どかかで』って不確定要素がなかなか入り込む隙もないくらい、効率的でせわしない世の中なのかもしれないねぇ。




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