
ここのところ吉田拓郎氏が活動をやめるとか引退するみたいな事で色々報道されてますな。「最後のアルバム」だとか「この番組が最後のテレビ出演になる」とか。
じいちゃんからトランジスタラジオをもらって聞き始めた子供の頃が、拓郎とか陽水がすごい人気だった頃でね。その時代の中心にいた人なもんだから、それなりに思うところはある。
音楽に関して言えば「この人がこの時代の中心だった」って、世間も他の音楽人も含めて合意が成り立つような時代はもう来ないだろうな。
まぁ、今回は本人がきっぱり辞める(なんらかの形で音楽は続けると言う事らしいけど)と言ってるんだから、きっとそうなんだろうけど、最近の皆さんは知らないだろうが以前にも「吉田拓郎はもう引退するんじゃないだろうか」と騒がれてた時期があった。
僕が一番拓郎に入れ込んだ時期でもある。
なんかちょっと自分でも「40歳あたりで区切りをつけたい」みたいな発言をしてたような気がするが。そこらで先のことを白紙にしとこうって意味合いとして。
んで、自分らで立ち上げたレコード会社の社長を辞任したり、今の奥様とのスキャンダルとそれに伴う前の奥さんとの離婚の噂が出て結局離婚したり、本当に「コレで辞めるんじゃないのか?」って他の出演者もそんな気持ちを持ってたようなオールナイトイベントやったり(観にいきました)。社長やめてからは、なんかえらい勢いでアルバムを次々出してたなって印象があって。
多分、半年に1枚ペース。
この辺りの吉田拓郎の作品が僕は一番好きであった。
当時の音とか歌の内容とかが、その頃の自分の気持ちの状態にフィットしてたんだろうね。あるいは、強く憧れたというか、まぁ相性が良かったんでしょう。
その中での一番のお気に入りがこのアルバム。
以前に書いたオフコースのレコードを貸してくれた女の子に聴かせたのもコレだ。
その数年前からのリリースラッシュはどれも自分にとってピンと来るものがあって、結構夢中になってた気もする。そして、がっつりと自分に噛み合ったこの作品以降の2,3作で徐々にピントがズレてきて(あくまでも、自分とのです。好みの問題といってもいい)、僕自身は「コレで拓郎は見納めなんだ」と思って観にいった85年のオールナイトイベントで、スッとそれまでの熱が消えたのね。
正直、あれ以降は新作はチェックするけど熱心に聴き込む事はなかった。
拓郎が終わったわけではなく、僕の『吉田拓郎時代』が終わったと言うことです。
なんと言うかね、僕も若かったし、拓郎よりも下の世代の人達が出てきて、より近い感性で憧れを持てる、自分にフィットする音楽の方に夢中になって行く訳です。サザンとか元春とか。
このアルバムに話を戻すと、一曲目のイントロのギターリフからもう引き込まれる。ポップだしロックンロールだし、おそらく今の奥さんと知り合ったりして、盛り上がる気持ちがあったんだろうけど、そのちょっと発情した感じとかが、思春期の少年を焚きつけたんだろうな(笑)。
当時は気づかなかったけど、今YouTubeとかで当時の拓郎の映像なんか観てると、ものすごい色気のある人だな~って思う。色っぽくてキュートだ。これは女性はほっとかないだろうって納得できる空気。そんなもんが歌に出てる時期だなって。
恥ずかしながら、若い頃の自分が勢いよく女の子の尻を追いかけ回してたのって、このアルバムの功績ではないかと思う(笑)。
それともう一つ、今だにこの作品だけはたまに聴く理由があって、やっぱりどっかに「オレはもう降りるよ」みたいな気分が漂ってるのね。それが若い頃にはかっこいい大人の魅力に思えた気もするし、今聴き返すとその頃の心境に思いを巡らせることができるからかもしれない。
なんかケリをつけるんだっていう感じってのかな? それがまだ世の人達からすれば働き盛りの年齢だから、変にエネルギッシュに「全部まっさらにしてやる!」みたいなアドレナリンが出てたんじゃないのかな?
若い頃に時代の中心になっちゃってさ、音楽業界のなかで色々と切り拓いちゃってっていう事をやって来たからか、どこか疲れちゃってたのかもね。多分、今のすごい売り上げで人気の人達とは違う心境だと思うんだよね。
それからしばらくして、テレビでkinkikidsなんかと楽しそうにやってる姿も素敵だったけどさ。本来なら「大御所」としてふんぞり返って、皆様から崇められててもいい人が、気のいいおじさんになってて、アレはアレで好きと言うか、「こういう位置に納まったんだな~」って微笑ましい気持ちになったし。
でも、僕としてはもう音楽を興味深く聴けなくなっちゃてるんだよね。さっきも書いたように、僕の吉田拓郎はだいたい85年あたりで終了してる。
だから、今だに彼の以後の作品よりも、この頃のアルバムに興味がある。
70過ぎて「もう辞めます」ってのはなんとなく理解できる気がするんだ。一般的な意味で。
体力のこととか、声の衰えとかあるだろうし。
でもあの当時の、おそらく本人にとっては余計なものがまとわりつきながらやって来た孤独感とか、疲弊感とかさ、同時に女性に対して生き生きと発情してる感じとか、そういうのは興味が尽きないんだよね。わからないけどなんか魅力的。
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