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  • 執筆者の写真辻正仁

#015 グラン・ブルー / Le Grand Blue(1988)


「良い映画というのは、劇中に出てきた料理を食べたくなるものだ。」


というのは、映画好きな僕の友人の言葉であるが、この映画を観返すたびにその言葉を思い出す。

もう少し丁寧に説明すると、この映画を観ると、僕はスパゲッティが食べたくなり、それで友人の言葉を思い出して、毎回「なるほどね」と思うのです。

ちなみに、映画の中では『海の幸のスパゲッティ』とあとは主人公の友人の母親が大量に茹で上げた、なんだかよくわからないスパゲッティが登場するのだが、僕が食べたいのは『ミートソーズ』か『ナポリタン』である。僕が子供の頃っていうはこの2種類以外にスパゲッティが存在するとは思ってもみなかった。

どうでもいい話だな。


ところで、劇中で登場人物がスパゲッティを食べる時、クルクル巻いたりしないんだよね。ちょうど箸でうどんか蕎麦でも食べるみたいに、フォークで麺をひっかけてすするのだ。これがなんとなく好きだ。よくはわからないけれど、本場の人たちの日常的な食べ方ってこうなのかもしれないね。

日本みたいにスプーンも出てきて、その上で麺を巻いて口に入れるなんていうのは、イタリアでは上手に食べられtない幼い子供の食べ方だと聞いたこともある。上品な食べ方なわけではないらしい。


今思い返すと、日本でミートソースとナポリタン以外のスパゲッティが普及し始めたのって、この映画の公開時期とそんなに変わらないんじゃないだろうか?

昔は喫茶店やレストランぐらいしか置いていないメニューだったのに、今ではコンビニなんかでも様々な種類が出ているし、『スパゲッティ専門店』まであるね。

気がつけば世間では『パスタ』なんていう呼び方をするようになってるし。

これはでも呼び方として抵抗あるんだよな。

『パスタ』って小麦を練って加工したものの総称であって、それを麺にしたものがスパゲッティのはずなんだ。


まぁ、そんなアレコレはこの映画と全然関係がないだろうけれど。


公開当時はこの映画のことなんてまったく知らなかった。

僕はその頃、レコード屋さんで働いていて(もうCD屋さんと言われるようになってたかも)、映画のビデオが確か3800円とか、そういうお手頃な価格で出始めた頃だったと記憶している。

いわゆる名作とかヒット作がどんどん安価で発売され始めていて、それに紛れて近年の作品もちょこちょこ出ていたのね。


それで、当時はまだ”グレート・ブルー”ってタイトルで公開、そして発売されていて(この映画は編集の仕方でいろんなバージョンが存在している)、映画がヒットした訳でも大きな話題になったわけでもないから、どの店も最初はそんなに大量に仕入れてなかった。

そもそも販売会社だってそんなに売れると思ってなくて、製造本数も少なかったはずだ。


それがね、気がついたらコンスタントに売れている。なんならわざわざ何件も探し回って買いに来る人とかさ、問い合わせして来る人もいたりして、注文しても製造が追いついてなくて何度か入荷待ち状態になってた覚えがある。


公開時にはヒットしなかったけれど、観に行った決して多くはない人たちからのクチコミとか、気の利いた雑誌での紹介とか、ちょっと影響力のあるアーティストが話題にしたりとかで評判が広がっていったらしい。


それは当時知らなかったんだけれども、ジャケット見てみると海だしさ、イルカが飛んでるし、青いし…。僕の興味を引くには充分だったので、なぜ世間の皆さんはこの映画をそんなにお買い求めされるのだろうと思って、自分でも買ってみたんだ。


家に帰って観てみた結果、無性にスパゲッティが食いたくなった。

それほどいい映画でした。いや、スパゲッティ抜きにしても。

夢中になった。


そして、そんな公開後に高まった評価を受けて、数年後に編集を新たにして長尺となった『完全版(今で言うディレクターズカットみたいな事だね)』と銘打って”グラン・ブルー”ってタイトルで劇場再公開となったのね。

当然、観に行きまして。かなり前の方のスクリーンが視界に収まりきらない座席に座って、思いっきり海の中に潜り込む感覚に浸って観ていた。


そして帰りにスパゲッティ食って帰ってきた。


ものすごく大雑把な言い方すると、この映画って「社会不適合者が自分の世界に潜っていく話」なんだと思うけどね。自分はなぜこういう話が好きなんだろうと、時々思う。


以前紹介した”All That Jazz”もそうだし、あと”未知との遭遇”もそうなんだけど、多少の葛藤はあるにしても、周囲の人を傷つけたり、一般社会に当てはめると道義や責任を放棄して、自分の夢中になったことに向かっちゃう主人公の出て来る話って繰り返して観てる事が多い気がする。


しかも、若い頃に観てた時って、そんなにそこに気がついてなかったな。「あれ?」って思い始めたのがいつの頃からかわからないけど、きっと気にし始めたときから僕は若者ではなくなったんだろう。

まぁ、若者ではなくなってから観てる方が、その分いろいろと味わい深くなったりするから面白い。観終えた後でそんな事を考えながら食べてるスパゲッティは、相変わらずミートソースだけどね。


ちなみに、僕がスパゲッティを食べたくなるきっかけがもう一つあって、それは村上春樹の小説なんだけど、アレはアレでまた世の中に順応できない人の話と言えなくもない。スパゲッティってなんかそういう傾向を有しているんだろうか?






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