不精者なんで髪を切りに行くのは年に3回くらい、多くて4回。もう15年ほど柳本さんにやってもらってるのだが、そういうワケで会っている回数はそんなに多くはない。昨年は確か11月に「よいお年を」と挨拶して帰り、新年の挨拶をしたのは4月の後半になってからの話だった。
柳本さんはKISSとサザンが大好きで、自らサザンのコピーバンドで歌ったりしている。歌ったりというか、話を聞いていると歌の合間のトークでの小ネタに命をかけているようであるが。
そういう人なので、髪を切ってもらっている間の話題はもっぱら音楽の話で、「面白いバンドを見つけた」とか「この曲が良かった」みたいな情報交換をしている。
そこで「すげぇ、いいんだわ~」と教えてもらったのがGLIM SPANKYである。たしかデビューして間もない頃だったと思う。
音楽の話って、聴いてない人に良さを伝えるのって結構難しいのだが、最近は便利になっているので、互いのスマホを駆使して
自分のミュージックライブラリーだとかYouTubeから聴かせあったりできるので、その辺も任せとけだ。
「これで一人分のカツラ作れるかもな」っていうくらいの毛髪が切り落とされて、次第に頭が軽くなっていく中で初めて聴いたGLIM SPANKYがやたらスッキリした気分にさせてくれたのは、多分散髪のせいだけではないだろう。
まずサウンドがカッコいいってのはあったんだけど、歌ってる声がもう「これがロックです」って感じでね。
家に帰ってからさっそくこのファーストアルバムを自分のPCに落とし込んで、ヘッドフォン付けて観賞。収録時間がトータル45分くらいなのが素敵だ。ロックンロールアルバムとしてちょうどいい。
いや、実際がどういう人かは知らないけど、ボーカルがいいよね、不遜で。
歌詞の内容じゃなくて、歌ってる声をセリフにすると「テメェ、やんのか?コラ」とか「話になんねぇよ」とか「なんだ、こんちくしょう」とか、そう言ってる…ような気がする。
なんというか、根性が健全に捻じ曲がってるなって。これが健全じゃないアレだと、この感じにはならないんだ。
ビバ!ロックンロール!
でね、不覚にも涙がこぼれたのよ。タイトルナンバー聴いて。
なんでかって、思い当たるフシがあるの。曲の主人公に。
「あ、コレ、思春期のオレだ」みたいな。
こんなところでまだ元気にやってたんだね。それが嬉しくてたまらんかった。
それ以来、他の曲でも、このアルバム聴くと泣けるんだ。こんなガチャガチャしたロックンロールで「なんだ、こんちくしょう」とか言ってそうな音楽聴いて。
初めて聴いた時もなんかソワソワしちゃってね。「きちんと髪の毛切ってる場合じゃなかったんじゃないか?」みたいな。
何に対してかよくわからんけど、「まだ行けるぞオレは」って。大人に怒られても、友達とバンド組んで学校祭に出て、女子からキャーキャー言われてやるぞ的な情動が湧き上がる。
で、そういう情動を眺めて涙ぐんでるってのが、もう歳取っちゃってる証拠なのもわかってるんだ。思春期当時のオレだったら夜中にあてもなくチャリンコで疾走してたんだから。
ほら、10代の頃聴いてた曲を聴いて、当時の出来事や気持ちを思い出すとかはありそうじゃない? 実は自分自身はずっと聴き続けてるもんだから、そういうことがあまりないんだけど。
それがさ、結構な歳になってから出てきた新人のデビュー作を初めて聴いて蘇るんだから不思議なもんだよね。
喫茶店で友達とダラダラ過ごしてたとか、一人で路地裏に座り込んでたとか、もっとここに書けない事とか(笑)、そういう風景と、その時に抱えてた気持ちみたいなものが、今ここにあるかのように感じる。
あるミュージシャンが「ロックンロールは若い人たちの為のものだ」って言ってたのがこういう事だったのかってのが、コレ聴いてわかったよ。
こういう気分を知ることができるんだから、歳を取るのも悪くないし、床屋に行くのも悪くない。今度は多分、夏の終わり頃になるのかな?
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