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  • 執筆者の写真辻正仁

#002 Still Crazy After All These Years / Paul Simon (1975)

更新日:2022年3月4日



”サイモン&ガーファンクル”はもちろん知っていた。中学生の頃から。

どこで知ったかは忘れたけど、多分ラジオから『サウンド・オブ・サイレンス』とか『明日にかける橋』とかが流れていて、それを聴いていたんだと思う。

でも、当時はそんなに興味なかったんだ。その理由は、後になって考えると多分ガーファンクルの声があまり好きではなかったんだと思う。世間では美声ってことで評判良かったらしいんだけど、どうもそそられなかったんだな。


それが18、19歳の頃にはポール・サイモンに結構入れ込むようになった原因というのは、そもそもはテレビでやった”サイモン&ガーファンクル再結成コンサート”を観たことにある。1981年にやったセントラルパークでのやつ。

どうも、当初はポール・サイモンのソロって事で企画されたらしいけど、前年に自分が監督、主演した映画とそのサントラ的なアルバムがコケた(僕はこのアルバムも好きなんだけどね)りしたこともあったりとか、諸々あって「アートと一緒にやろう」ってことになったみたい。

なので、サポートミュージシャンは当時のポール・サイモンのバックアップメンバーで固められている。


その当時はまだ高校生だと思うけど、それ観て、後に発売されたそのライブアルバムを同級生に借りて聴いて、そこで気がついたのよ。

「なんか、ガーファンクルがメインボーカルをやってない曲は好きだぞ」と。

それはほぼ、ポール・サイモンのソロ作品で、ライブではガーファンクルはコーラスで入るか曲によってはお休みしている。


借りたレコードのライナーノーツを読んでそのような事を知り、それから何年かして高校を出て、バイトで小遣いを稼ぐようになってからポール・サイモンのソロ作品を取り揃えることになる。

ここでもちょっとハマるきっかけがあった。


当時『CATCH BOX』っていうカフェバーみたいな所があってよく行ってたのね。二階に上がるとプライベート空間みたくなってて、そこで大きな画面でビデオとかレーザーディスクで音楽ものの映像をアレコレ流してたのよ。

で、そこでたまたまポール・サイモンのソロのライブが流れていてさ。それ気に入っちゃって、マスターに「コレ、誰ですか?」って聞いたらあの解散コンサートの好きだった曲歌ってた人だと判明して。

そしてそこのマスターは”サイモン&ガーファンクル”が好きだったようで、若い奴が気に入ったってのが嬉しかったみたいで、その後僕が二階に上がると必ずポール・サイモンのなにがしかを流してくれたり、レクチャーしてくれたりしたのだった。

それで、輸入盤でしか出てない限定のボックスセットとか色々とレアなものまで教えてもらって入手してたから、ほんとに入れ込んでたんだな。


その中で最初に手に入れたのがこの”Still Crazy After All These Years”だった。グラミー最優秀アルバム賞も受賞した、ソロ初期の傑作アルバムである。ちなみにプロデューサーはフィル・ラモーンって人で、後にビリー・ジョエルの”52nd Street”でも同賞を受賞してる。自分が聴いたのはビリー。ジョエルが先だったけど、ライナーノーツで同じ名前を見つけてプロデューサーってものの存在に注目するようになり、後にはプロデューサーが誰かによって作品に関心を持ったりするようになる。


うん、プロヂューサー本人が曲を作るわけではないんだけど、この2作品はどこかテイストが似てるかもね。「ニューヨーク的」って言うのかな? ちょっと都会的でジャズっぽい匂いもする。


でもね、なんというか小綺麗にまとまってるって感じでもないんだな。どこかドロ臭いってか、あの清潔感漂うアート・ガーファンクルの無味無臭な声(あくまでも個人の感想です)にあまり魅力を感じなかった理由がここではっきり分かった。

ポール・サイモンの毒気とユーモアと憂いは好きだったのよ。

洗練されたサウンドなんだろうけど「オシャレにジーンズをはきこなしてる」って感じかな?

表題曲の中の「Crazy」って言葉をね、曲の中で同じ言葉を違う意味で使ってるってのも気が利いてるなとかさ。


他に入れ込んだアーティストって割とシャウトする人たちが多いけど、この人あんまりそこが売りじゃないんだよね。あんまり声を張り上げない。なのになんで惹かれたんだろうって考えたら、多分この人ゴスペルとかに興味あるってか、影響受けてるんだよな。そこでソウル系の人たちに混じってこの人を気に入ったのかもねって、今はそう思う。

ってか、後に自分がゴスペルに興味持ったのもそういえば、この人の曲からだったかもしれない。


CDや、ましてや配信の時代になってくるとピンとくる人は少ないだろうけど、レコードの時代には、何度も何度も聴き込んだ事を「レコードが擦り切れるくらい聴いた」と表現してたんだけどね。

このアルバムで、それがたんなる表現ではなくて本当に擦り切れるんだということも知った。だからこのアルバムはレコード2枚買った。そしてCDの時代になってCD買って、リマスター盤も買って今はそれをPCに取り込んで聴いている。もうどんなに聴いても擦り切れないのがリーズナブルではあるがちょっと寂しい。


コレ聴いてから、その前に出してたソロ作品を発表順に集めて行ったんだけどさ、そうやって聴いたらコレがソロになってからの一つの集大成だってのがよく理解できたな。

で、この作品の後に、先述の失敗したサントラともう一枚出して(どっちも好きだけど、ある意味、集大成後にそこまでで得たアレを拡散してる感じはしなくもない)、それからアフリカに行って『GRACELAND』作ってまたグラミー獲得したんだっけか?


ん~そっからはちょっと違う空気になって、聴いてはいたけどそんなに入れ込む事はなくなってしまったな。ただ、サウンドが新しくなって斬新さがあったのでそれはそれで楽しいんだけど。

今でも聴くとなると、この頃のポール・サイモンが好きだな。





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